welcome to a corner of the internet

ネットの片隅へようこそ

ここは、誰にも見つからないように作られた場所ではありません。
ただ、誰も探していないだけです。
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01  自己紹介

私は区のオフィスで、朝の9時から夕方の6時まで、椅子に座っています。仕事の内容を人に説明しようとすると、いつも3秒くらい黙ってしまう。表計算を開いて、メールを閉じて、また開く。金曜の夜になると、その週に自分が何をしたのか、ひとつも思い出せません。思い出せないということは、たぶん、何もしていないのと同じです。

23歳のとき、私の顔は少しずつ剥がれ始めました。最初は写真の中だけでした。証明写真を撮ると、目のあたりが滲む。現像の失敗だと思っていました。次に、エレベーターの鏡。それから、暗くした画面。今では、朝の洗面台に立っても、そこに誰がいるのかよく分かりません。

目のあたりが破れた証明写真の4コマ
fig.1  —  id photo, 4 frames
深夜の洗面台の鏡に映る、顔の崩れた人影
fig.2  —  washroom, 03:11

会社の人は誰も指摘しません。たぶん、みんな同じだからです。ある日、隣の席の人の輪郭がひどく乱れていたので、思いきって声をかけようとしました。でもその人は、いつもどおりの声で「おつかれさまです」と言って、いつもどおり定時に帰っていきました。以来、私も何も言わないことにしています。

オフィスの椅子に座る、顔の輪郭が乱れた男
fig.3  —  desk, 14:32

剥がれた分だけ楽になる、という話ではありません。むしろ逆で、輪郭がなくなるほど、自分がどこまで広がっているのか分からなくなって、朝が重くなります。私は毎朝、自分の縁を探すところから一日を始めています。だいたい見つかりません。見つからないまま、椅子に座ります。

夜のオフィスのエレベーターの鏡に映る、顔の崩れた男
fig.4  —  elevator, 22:47
02  持論

意味について

意味というのは、出来事に最初から埋まっているものではなくて、あとから貼られるラベルのことだと思っています。人は起きたことを説明できるようになった瞬間に、それが「意味のあること」だったと錯覚する。順序が逆なんです。だから私は、意味を探すのをやめました。かわりに、あとで貼れそうなラベルの数を増やしています。それが趣味というものだと思っています。

継続について

続けていれば報われる、という言い方が私は苦手です。続けていても報われないことのほうが圧倒的に多くて、報われた人だけがその台詞を言えるようになっている。生存者だけが喋れる部屋で聞いた話は、あまり信用しないほうがいい。それでも続けるとしたら、理由は「報われるから」ではなく、やめると手持ち無沙汰だからくらいで十分だと思っています。

作ることについて

それでも夜になると、私は何かを作ります。誰かに見せるためではありません。作っている間だけ、輪郭が少しはっきりするからです。手を動かしているあいだは、自分がどこまでで、どこからが世界なのかが、なんとなく分かる。朝になると元に戻ります。だからまた次の夜に作ります。これはたぶん、治療ではなく、対症療法です。

公開することについて

作ったものをネットに置くのは、瓶に手紙を入れて海に流すのに似ていると言われますが、私はもう少し即物的に考えています。海に流すのではなく、自分が確かにここにいたという証拠を、自分の外側に置いておく作業です。私の顔は剥がれますが、置いたものは剥がれません。少なくとも、サーバー代を払っているあいだは。

03  置いていったもの
プログラミング用語カンペのスクリーンショット
work 01

プログラミング用語カンペ

全26章・266セクション。プログラミングの用語を、一語ずつ意味付きで並べただけのチートシートです。言語の地図から始まって、Java、JavaScript、Python、Go、TypeScript、SQL、Docker、AWS、認証とセキュリティ、AIエージェントまで。

覚えられないから書きました。書いても覚えられないので、検索を付けました。全章を横断して検索して、一致した語まで飛んでハイライトします。結局いま私が一番使っています。

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ソトヅラのスクリーンショット
work 02

ソトヅラ

自分が思っている自分と、友達から見えている自分は、どのくらいズレているのか。それを16タイプで測るものです。自認を選んで、友達に答えてもらう。回答が集まるたびに結果が変わります。

「自認 INFJ × 友達から見ると ENFJ → 本当は帰りたい ENFJ」みたいな結果が出ます。顔が剥がれている人間がこれを作ったのは、たぶん偶然ではありません。ログインは LINE だけで、メアドも本名も要りません。

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哲学者の休憩所のスクリーンショット
work 03

哲学者の休憩所

ホルモンと頭の良さの話です。セロトニン、ノルアドレナリン、コルチゾール、オキシトシン、テストステロン、アセチルコリン。2024〜2025年の研究でひっくり返った定説を集めて、「で、結局どうすればいいの?」というところまで落とし込んだ読み物。

自分の中身が化学物質の配合で決まるなら、輪郭が薄いのも配合のせいということにできて、少し気が楽になります。なりませんでした。それでも資料としてはよく出来たと思っています。

otium.fiction-taro.com →

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まぁ全部嘘なんですけどね。

この作品はフィクションです